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2015年8月某日 都内某所

劇団セルビシエ’第6回公演『ヴィア・ドロローサ』振り返り座談会 vol.4

インタビュアー:渡辺直希(劇団セルビシエ’団員)

 

高橋陽文(脚本・演出、以下:高橋)

タリ(マリナ役・衣装・振付、以下:タリ)

松本鮎子(アンデレ役、以下:松本)

木野紘器(バルトロマイ役、以下:木野)

田中智恵理(老婆役、以下:ちえり)

 ―その台詞を言う人が芝居の中で

その台詞を言うに値する男として描かれているかが重要―

(木野)

――   まあ、確かに、和田のはメッセージ性が強く出てて、陽文のはもうほとんど中身のないイイ

     カンジ……
一同   (笑)
高橋   それは何?褒めてんの?(笑)
――   と言いつつ!と言いつつ何か書いてるからには、なんか言いたいなっていうことが少なからず

     あったと思うんだけど、それは今回何だったの?
高橋   うーん……(しばし沈黙)
――   ……
高橋   あ、でもね、なんか、言いたいことじゃないんだけど、正確に言うと、別にこれを絶対伝えたい

     わけじゃないんだけど、でも俺ん中で気に入ってるセリフっていうか、くだりがあって、それが

     要はあのなんだっけ?
木野   「一発ぶん殴る。」
高橋   そうそう!まあ、結構ポップに話書いてると思いきや、裏に走ってる事件としてはレイプとか、

     虐待とか、結構重々しいやつがあるんだけど、それをメッセージとして伝えたいっていう訳では

     なくて、俺はそう思うっていうだけの話なんだけど、そういった苦しい事件を解決する時に、

     今回で言えばイエスがマリナに「会ってどうするわけ?」って言われたときに「一発思いっきり

     ぶん殴るでいこうよ」みたいな。「それで全部チャラにしようよ」みたいなこと言うじゃん?

     あのくだりが俺的には結構気に入ってるっていうか。
――   うんうん。
高橋   要は俺が思う、一番平和的で爽やかな物事の解決方法かなって思うわけ。例えば、『今回、和田

     は、いません』(劇団セルビシエ’オムニバス公演)で俺が書いた『泥棒と惑星の等式』では虐待

     が起きてて、それで三太(主人公)が殴るよね?で、今回もそうだけど、そういう凄く重々し

     い、本人にとっては凄く苦しい事件があるんだけど、それを本人が一発、悪いやつをぶん殴っ

     て、それでチャラに出来たら、なんかすごくこう、平和的って言うか、ある意味ね。
――   まあ、ある意味ね。
高橋   すごい爽やかで……
松本   うーん……
高橋   もちろんいろんな感情が混ざり合って、絡み合って、グチャグチャってなって大変なんだけど、

     それを一発ぶん殴るくらいで、スカーンって晴れさせることが出来たら、それが凄い爽やかで、

     素敵だなって。だけどやっぱり一発はぶん殴っときたいっていうか(笑)
――   あー(笑)
高橋   悪い奴は一発はぶん殴っときたいっていう(笑)
――   人情としてね(笑)
高橋   そうそうそう(笑)そういう勧善懲悪的なとこもあるけど、でもそれもやりすぎないで、「一発

     ぶん殴るくらいでチャラにしようぜ」っていうあのイエスのセリフが俺的には気に入ってる

     かなって。
――   見事に一つのアンケートで批判されてたけど……
高橋   そう(笑)
一同   (笑)
――   「一発でぶん殴ってチャラにするのはどうなんでしょう?」って(笑)
高橋   そう、言われてたね(笑)でもまあまあ、そういう意見もそうだなって思う。
松本   たぶんそれうちのお母さん……
高橋   そうなんだよ(笑)
松本   だって私それお母さんに言ったもん。
――   だって今たぶん、なんか納得してないうーんっていう声出してたもんね?
松本   (笑)違う。それをお母さんだってわかったから、その話した。こうやって言ってるよって(笑)
高橋   でもたぶん納得はしてない(笑)でもこれはもう納得できない人は絶対納得できないし……
松本   そう、でもね、すごい男性的だなっていうのは正直、女性としては思うわけ。
高橋   あー確かに。ちょっとロマンチックな考えだよね。なんか。
――   ロマンチック……
松本   ていうかなんか、そういう、前回もだし今回もだけど、全然劇としては良いんだけど、やってて

     も楽しいんだけど、そういう弱い立場に常に女性がいる感じで描かれるところは……
高橋   ああ、確かに。
――   あぁ、そういう感じね!そっちか!
松本   そう、そういう風に思うし、単純に。本当に。
――   うん。
松本   そのコメディの中で描かれる話題として女子がそういう目に遭ったっていうのが男性っぽいなっ

     てすごい思った。
――   あぁ、でも、陽文は、「女の敵」だから。
松・高・タ   (笑)
高橋   そう!まあ……
タリ   キング・オブ・くずだからね(笑)
――   そう、キング・オブ・くずだから(笑)
一同   (笑)
松本   (笑)それ、別にそれを、「じゃあこんな重いのやらなきゃいいのに。」とかは全く思わないだけ

     ど、ちょっと冷静に、自分は女子として見ると、そういう風に思うときもある。
――   なるほどね。たまには男もやられろと(笑)
松本   そうだし、もし女子だったらこういう風に書かないんじゃないかなって思う。
高橋   うん、書かないと思う。
松本   単純に。
――   確かにね。
松本   単純にそういう風に思う。
高橋   だから結構そのー、なんていうの?テーマを設けてない分、逆にこう、ある意味、そういう深刻

     な出来事とかを記号的に、意識的に使ってるって言うか。
――   うん、うん。
松本   そうだね、そうそう、だからそこは別に嫌とかではない。
高橋   一個話にドンっていうなんか重石を乗せるために……別に俺、虐待に対して何の意見があるとか

     レイプに対して何の意見があるってわけじゃ全然無いんだけど、まぁ記号的にそういう事件を

     置いてっていう使い方をしている。
松本   あぁ、すごい分かる、そんな感じする。
――   木野はそこにたいしてどんな風に思ってんの?
木野   !?
一同   (笑)
高橋   まだかっこつける準備全然してなかった(笑)
木野   うーん……ま、実際にね、殴って解決するかっていうことはおいといて、殴って解決したらいい

     よね。
――   あー、まあね。
高橋   希望的観測っていうかね。
――   男はなんかそれでいいかなって思っちゃうんだよね。
高橋   そうなんだよ。
木野   漫画のようなね。分かりやすい世界。
高橋   うんうん。
――   スカッと一発殴って(終わり)っていうのは気持ちいいと感じちゃうよね。
木野   しかも、それを、気持ちのいい男が言うと、いいんだよね。
一同   (笑)
松本   確かにね(笑)
木野   「それならそうかも!」って。
――   確かに。
木野   だから言う人が、その台詞を言う人が芝居の中でその台詞を言うに値する男として描かれている

     かどうかが重要。
――   あー、描かれてるかどうかね……そこで言うと今回はどうだったの?
木野   よかったんじゃない?精悍なね。
高橋   本当にね、友の力もデカイけどね。
木野   ちょっとね、「バカ」なんだよ。
――   そういうことを言う奴はね。
木野   そう。やんちゃなんだよ。
高橋   確かにそういうテーマって言うか、まあメッセージっていうほどのもんじゃないけど、希望的

     観測をスッとちょっと織り込んでるって言うか。

 「俺だけどね!作るの!」ってワタが(笑)

(高橋)

――   なるほどなるほど!じゃあちょっと裏方的な話をちょっとしようか。
高橋   まあ裏方っていう意味でいったらね、まあ衣装や照明、舞台美術、音響、制作とか、舞監とか、

     今回はね舞監とかも外部の方、じんとん(和泉淳)がね。
――   そう考えると外部多かったねえ。
松本   そうだね……
――   やりづらさとか無かった?
高橋   ……いや、まあ、あのー……こっちはさあ、割と「セルビシエ節」でやらしてもらったから、あん

     まりこうストレス無く、個人的にはストレス無くやってたんだけど、要は、それが外部の人には

     どうだったかなって言うのはあるけど。
――   なるほど……
高橋   まあ、裏方で大変だったのは舞台美術。結構苦労したみたい。ワタ(劇団セルビシエ’団員渡會展之)

     に聞いてる限りだと。
――   ワタがね。でも最後、ナルシスの足場作って、劇場さんから「これ残しといてくれませんか?」

     って言われたのはうれしかったよね。
高橋   ねえ。あれもさ、結構急ごしらえって言うかさ。
――   あ、そうだったんだ?
高橋   うん。なんか、もう一回くらいのタイミング……なんかどっか途中のタイミングで、「やっぱ

     あそこに台作ろう。」みたいな。
――   へー。
高橋   ていうのを、ワタにパンって投げて。
――   本当はなに?本当はあそこの階段の上でしゃべろうっていう風になってたの?
高橋   そう。それがね、どのタイミングだったかな……?あの小屋入りとかじゃないけど、途中で一回

     小屋見に行く機会があったの。稽古期間中に。
――   うん、うん。
高橋   で、その時に見に行って、さとしょう(劇団セルビシエ’団員佐藤翔太)とかもいて、でパーッと階段

     あがって、「ここどう?見えるかなぁ?」って言ったら、「やっぱ見えないね」っていう話に

     なって。
――   役者もあそこ天井低いからやりにくいよな。
高橋   そう、だから、「やっぱ作るしかねぇな」っつって、そこでワタに「やっぱ作るわ」って。
――   「やっぱ作るわ」って?(笑)
高橋   「俺だけどね!作るの!」ってワタが(笑)
一同   (笑)
高橋   でもね、そしたら、素晴らしいものが出来上がってね。
――   よかったよね。

(文責:和田幸子)

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